心構えの力
経営者にとって「心構えの力」とは
人の上に立つリーダーには、人一倍きちんとした心構えが求められます。
心構えとは、精神論ではありません。あなた自身のリーダーとしての振るまいの軸となり、会社の軸となっていくものです。そこには、考え方だけでなく、人間性や感性も求められます。
心構えがあってこそ、身に着けた知恵・経験をより効果的にあなたの会社に生かしていけるのです。
二条彪 特別インタビュー
経営者にとって「心構え」とは
2019/07/01
南波:それでは心構えの力について早速聴いていきたいと思います。よろしくお願いします。
心構えの力ってそもそも何?というところを解説していただけますでしょうか?
二条:心構えの力は、経営者としての考え方とか、価値観とか、判断基準とか、道徳観とか、そういうもので、理論理屈ではありません。
南波:いわゆる学校とか本とかで、学べるようなものではない。
二条:財務とかマーケティングとか経営戦略とか、そういう理屈を知っているだけで経営ができるんだったら、学校で勉強して成績のいい人が優秀な経営者になるんだけど、経営はそうとは限らない。
それは何故というと。理論理屈は、必要条件だけど十分条件ではないんです、経営者にとって。
理論理屈とともにその経営者としての考え方とか価値観道徳観がしっかり成熟していないと経営はうまくいかない。いくらお勉強ができて理論理屈知っていても、人のせいにしてしまうとか、あとは人を褒めることができないとか。信じることができないとか問い詰めちゃうとか。
そんな誰かがやるだろうみたいに依存的な気持ちの経営者であれば、経営はうまくいきません。心構えはだから、人としてどうなのか?みたいなところです、経営者としてっていうよりね。
南波:先生は、心構えの力は、大人の経営者とか強い経営者になる上で一番基礎となる部分だ、というふうによくおっしゃってると思うんですが。
二条:そうです。
南波:なにか先生の中でそういうふうに思うきっかけがあったと思うんですがいかがでしょうか。
なぜ、心構えが一番大事だなっていうふうに思われるんでしょうか?
二条:二代目社長の十六年間、理論理屈ばっかり追ってて理詰めで社員にも話をして、全部理詰めで経営していました。それが理由で、最後失敗したと思っています。
この仕事って実はいろんな経営者に会うんです。北海道か沖縄まで講演会セミナーで、それでいろいろ話をさせていただくと、あ、こんなに人として素晴らしい、成熟した大人の経営者がいるんだってことを知りました。そういう大人の経営者の人たちとたくさんお話して接することで、二代目社長やってきたときの自分の足りなかったこと、なかったことが、炙り出されるように見えてきて、ああこういうことが、僕はなかったから駄目だったんだって気づいたんです。それが経営は理屈ではなく自分自身の心構えや人としての振る舞い方が大切だと気づいたきっかけですね。
南波:強い経営者、大人の経営者になる心構えを身に着けている経営者さんと、そうでない経営者さんに差があることを、先生は気づかれたと思うんですけど、具体的にどのような差が出てくると思いますか?
二条:短期的にはあまり差が出てこないと思います。だけど十年ぐらいから、二十年になると明らかに差が出ると思います。どのような点で差が出てくるかというと、働いている社員さんの定着率だとか、モチベーションの高さとか、風通しの良さとかとか、あとは前向きさとか。それから社員さんだけじゃなくて、お取引先もそうですよね。あの社長といっしょに仕事していきたいっていう取引先が集まってきます。あとはお客様もそういうことがわかってくれて、共感してくれるお客様が揃ってきます。長い時間かけてその社長を取り巻く周りの人も、態度だとか、出てくる能力も含めて、違いは出てくるように思います。
南波:経営者は、人間性というか心構えを身に着ける、そういう人間性があり人間力が高いほうがいいというのは、なぜそう思われますか。
別に心構えを身につけなくても、一応理論理屈があれば経営者としてやっていけますよね。だけど、そこで心構えが大事になってくるのはなぜでしょうか。
二条:会社を長く続ける上では必要になってきます。
会社経営を長く、自分の次に渡していくには心構えがないと長く続きません。自分が社長時代に作った文化、会社の風土とか雰囲気を後継者は受け継ぎます。だから、しっかりとした成熟した大人の雰囲気というのは後継者が受け継いでいきますし、そういうことは関係ない、全部理屈でビジネスライクにやっていくという姿勢もまた後継者は引き継いでいきます。そうすると、自分の社長時代は何とかうまくいっても、次に渡した次の後継者がダメにしてしまうということになります。さらに言えば、ひどい人間性の人でも、五年六年は社長をやることができます。だけどそのあとは続きません。お客さんも含めて周りの人が付いてこないのです。以前から言っていることですが、商売というのは、人と人との営みです。人について来てもらわなければ、なりえないのが商いです。理論理屈だけでやっていく人は、短期的には持つんだけど長期的には長く続けることはできません。それから、理論理屈で経営をする人は人の心をつかむことができないから、損得だけで仕事するような人が集まってくるものです。僕の二代目社長の時がそうで、二代目社長を十六年やり、今この仕事は二十年やっていますが、十六年間のトラブルと今の二十年間のトラブルを比較すると、十六年間のトラブルの数は、今の百倍二百倍あったんです。
南波:それは多いですね。
二条:毎日もうトラブル。釣り銭がないだとか、来るって言ってた人が来ないとか、取引先が、店長と駆け落ちしていなくなって奥さんが怒鳴り込んできたとか。それで今振り返ると、やっぱり社長の僕がそういう人を呼び込んでいました。類は友を呼ぶというべきか。
南波:まさに、そうですね。
二条:損得だけで仕事するような人たちばかり集まってしまったから、トラブルもいろいろな意味で絶えない。言い換えると未熟な人ばかりだからです。そういうところでも、心構えが必要です。でも南波さんが言うように、心構えを知らなくても経営はできてしまいます。それはつまり最後の最後は何なのかというとそれは社長自身の向学心だと思っています。
南波:はい。
二条:やはり向学心、もう少し難しく言うと自己実現欲求のようなものです。自分をもっとよくしていきたいとか、もっと高めていきたいというような内的な部分で、欲求みたいなものがあるかどうかですね。
だから経営は、売った買ったでやっていけばとりあえずできるわけですが、それではなくもっと自分の内面を磨いていこうということです。それはやはり自分に向学心のような欲がなければできないわけですね。今のままでいいといえば終わってしまうことだから。最後の最後は、経営者として自分はどれだけ人間的に高まっていきたいと思っているかという心構えが問われます。だから人によって心構えをちゃんと磨いていく人と、磨いてない、別にいいよという人に二極化していくのです。
南波:なるほど。
二条:最後はそこです。だから心構えは必要だけれど、心構えを知っていたからといって今日の売り上げが上がるというものではないのです。
南波:すぐに効果が出るようなものではないのですね。
二条:だから損得で考えていると要らないと思うわけです。
南波:そうですよね。
二条:僕も昔そうでしたけど。
南波:すぐに利益上がるものじゃないから。
ですが、のちのち長期的な目で見ると、心構えをきちんと身に着けた経営者でいるほうがその会社は長く続いてくということですね。
二条:そういう、自分を人として、高めていきたいみたいな人が集まってきます。それでどういうことになるかというと、周りから、あの社長は素晴らしい人格者だよねって言われるようになりたいみたいなことになる。そういう欲があって初めて、心構えを身に着けようとなって、心構えの力がついてくると思います。
南波:心構えを磨きたいなと思っている経営者さんがいたとして、具体的にどういうことをすれば心構えは磨けるんでしょうか?
二条:一つは、自分がああいう人みたいになりたいなっていうロールモデルを見つけることが大事ですよね。
南波:はい。
二条:お手本を見つけて、その人がやってることなんかを真似ていく。そうすると、心構えを磨きやすいですよね。その人が取り組んでることとか、読んでることとか、見てることとか、そういうことを真似して、それで自分を磨いていこうとする。それはリアルな世界でですね。もう一つはフィクションの世界でロールモデル見つけてくこともいいと思いますね。
南波:例えば映画とか、本とか。
二条:小説とか。だから僕は池波先生の、鬼平犯科帳の長谷川平蔵なんですけど、長谷川平蔵みたいなリーダーって世にはいないんです。結局、理想のリーダーで。だけどいないからみんな憧れる。それで、あれだけ人気があるんですけど、ああいう一つのロールモデルを知っていれば、ああなりたいなーとか、同じような場面になった時に、平蔵だったらこうするよなとか、すり合わせていくものができます。それは別に漫画とか映画とかそういう人でもいいわけです。ロールモデルを一つ自分で見つけていく、そういうものが、いいんです。例えば渋沢栄一先生の本を読むとか、もっとさかのぼれば、三島中洲だとか山田方谷とか、もっとさかのぼれば、孔子の論語だとか、そういうものを、読むのはいいんです。読んでいいのですけど、実は、そういう本を読むだけでは、僕は心構えの力は磨かれないと思っています。
やはりあくまでも、本っていうのは知識なんですよね。僕は、知識っていうのは、体験とすり合わせて初めて生きるものだと思っているわけです。だから例えば、そういう本を人を高めるため読む。そして、リアルな人に会う。それで凄く「あーあの人尊敬できるな」って人がいる。その時にあの人のどういうところが僕は凄いと思うのかなとか、どういうところがいいと思うのかなというところを、深く自分の中で探索してくのに必要なのは知識なんです。
そういう、渋沢栄一先生とか論語だとか貞観政要とか読んで『リーダーとは』って読んでるとそれとすり合わせて、「あ、あの人のこういうところが素晴らしいんだ」と。人に対する接し方とか。だから、「ああ、じゃあそういうところを自分で今度は身に着けていこう」となります。知識がないと、「あの人すごいな、なんか、かっこいいなー」で終わってしまいます。
南波:なにかふわっとしたまま。
二条:うん、そうなんです。
南波:じゃあ自分の中で、学びを深めたり、明確化するために、本を読むのは大事だし。
二条:大事だし。
南波:かと言って本ばかりで身に着けても。
二条:ダメ。
南波:ダメだから、両輪回さなきゃいけない。
二条:ええそうです、両輪。だから本を読むだけでは、結局理論理屈と同じになってしまいます。理論理屈は常に実体験とすり合わせることによって活きてくるものです。だから僕は、学びと実践は両輪ですよ、といつも言っています。それで高まっていく、高まるというか磨かれて、ブラッシュアップできると思います。
南波:そうですね。
二条:六つの力を、強化していく。特に心構えっというのは基礎となり、軸となるものですから。どんなに理屈を知っていても、経営ができるわけではないんです。人は、やはり定期的にメンテナンスしないと、楽なほう楽なほうへ、自己中心的で依存的な方に行ってしまいます。だからこういう強い会社を作る手帳アプリを使って、自分を常にメンテナンス、定期点検してもらえればと。そのために小説とか映画とかそういう触れたものを書くページもありますしね。
南波:ありますね。
あと、この人のこういうところが素晴らしかったとか書き留めたり。
二条:そうそう真似したいところとかですね。それで自分の中に取り入れてって欲しいなぁと強く思います。
南波:自分をメンテナンスするのも、何かに書き留めないとなかなかふり返れないものですよね。そういう面でもシートがたくさん用意されているこの手帳アプリは、手軽に入力しておくことができ、効果的なんですね。
二条:紙の手帳もよい効果を上げていましたが、アプリになってより便利になったと思います。
南波:心構えがなぜ経営者に必要なのか、深いところまでお話を聞けて私も実感するところがありました。ありがとうございました。
ピックアップ!アプリの機能
強い会社を作るためには、強い経営者になるための心構えが必要です。
一見経営に直結しないように思えても、意識して見方を変えることで、大きな気付きを得られることがあります。
このアプリの「心構えの力」は、10ヵ条を読んで心に留め置き、日々の記録をつけることで、学びや気付きに繋がり、経営者に必要な心構えが自然と身につくように設計されています。常に身近にあるスマートフォンで、忘れないうちに書き込み、時々読み返すことが大切です。
毎日の積み重ねで、人間性の豊かな経営者を目指しましょう。

私が読んだ小説リスト
自分以外の人生に触れることで、豊かな人間性を身に着けることができます。
小説を読んだら読書記録をつけましょう。このアプリでは、基本情報だけでなく、感想や心に響いたセリフや印象に残ったシーン、表紙などの写真小説に描かれた人間模様に、経営のヒントが隠れているかもしれません。

心配りの記録
人と人との繋がりは、何よりも大切にしたいもの。相手の好みを知ることは、一層仲を深めるきっかけになります。アプリを使って、お世話になったあの方に頂いたものや差し上げたもの、食事をご一緒したことなどを、そのときの状況を添えて記録しておきましょう。
再度お会いする際には今までの記録を確認し、手土産選びやお店選びなどに役立ててください。